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『星の牧場』に風がきた
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牧場へ、いらっしゃい!

『星の牧場』に風がきた

ふれあいを求めて

 私がまきばYHにやって来た当初は、とても御客さんが少なかった。シーズンオフだから少ないと言ったわけでなく、前年比で明らかに客数が減っていたのです(まきばYHのデーターによる)。

 これは後で解った事ですが、この夏は、北海道全体に御客さんが少なかったようでした。なにしろ、例年なら二週間以上も前に満室になる人気YHが、当日予約がとれるといった状態でしたから。
 しかし、私にしてみれば少ない御客さんは大歓迎でした。御客さんが少なければ、それだけ御客さんとのコミュニケーションの機会が増えます。それだけ素晴らしいYH作りが可能になってくるのです。全ての御客さんたちとゆっくり話ができますし、出発する御客さん一人一人に、笑顔で「いってらっしゃい」を言えます。

 まず、私がした事は、全ての御客さんの名前を覚えると言う事でした。受付に座った私は、できるだけ御客さんと話す事に努めました。

 どこから来たのですか?
 明日は、どこに行くのですか?
 ★★は、どうでした?
 何日くらい旅をされるのですか?
 北海道は初めてですか?
 YHに泊るのは初めてですか?

 旅慣れてない人にとって、初めてのYHは緊張します。相部屋で、ミーティングがあって、知らない人と食事をし、規則があるといったYH。受付をして感じた事は、御客さんたちが、緊張しながらYHに入って来ると言う事です。この緊張をときほぐすには、こちらから話しかける事が一番です。一番いいのはギャグでも言って御客さんを笑わす事ですが、私のギャグは必ずしも笑いをとれるとは限りません。

 受付の次は夕食です。実は、YHで一番忙しいのが夕食の時です。まきばYHでは夕食は6時からと決っていましたが、なかなか6時までにチェックインしてくれる御客さん少なく、そのために私と寺西シェフは、四苦八苦したものです。

「少しでも美味しい夕食を食べてもらいたい!」

と、考えている私たちは、できるだけ御客さんの入りの状況に合せて食事を作りました。どんなに腕をふるったビーフストロガノフも、冷たくては美味しくありません。そして、一人ポツンと食べる食事も、美味しくないものです。夕食は、あくまでも皆で一緒に食べてこそ美味しいものです。食事を作るタイミング、食事を出すタイミング、そして席に座ってもらうタイミング。このタイミングが実に難しかった・・・・。

 YHで泊りあわせた見知らぬ御客さんたちが、旅の会話に盛り上がるか、ただの他人で終るかの分かれ目は、楽しい夕食のひとときで勝負を決します。夕食が盛り上がれば、ミーティングでも盛り上がるし、翌日のツアーの参加率も違ってきます。
 ですから、受付に座っている私にとって、最も気になる事は、食堂の様子でした。夕食の会話が無かったり、あまりにも食堂が静にだった場合、私は遠慮なしに乱入しました。受付の時に御客さんと、ある程度の会話をしているためか、私がヘルパーであるためか、御客さんは私の乱入を嫌がりませんでした。
 本当は、誰でも見知らぬ人と話をしたがっています。例外もいるでしょうが、YHに泊ろうとする人の多くの人が、ふれあいを求めて旅をしているはずです。その証拠に、人気YHと言われるYHの殆どが、ホステラー同志が気軽に話しかけられる所ばかりです。しかし、まきばYHの状況を言えば、ホステラー同志が気軽に話しかけられるYHではありませんでした。

 ところで、どこのYHにも、泊りに来る御客さんの傾向、客気質というものがあります。例えば桃岩YHに泊りにくる御客さんはドンチャンが好きだし、YH経験の豊富なホステラーさんが多いものです。
 一般的に言えば岬の外れとか、離島などにあるYHは、賑やかなYHである場合が多いものです。これは、岬の外れとか、離島などに行くホステラーさんの多くが、ある程度旅慣れてきた人たちが多いためだと思われます。
 それにくらべて小樽や札幌や釧路といった所は、どうしても旅慣れてないホステラーさんが多いものです。初めて北海道に来るという人はもちろん、生れて初めてYHに泊るという人が、ホステラーさんのかなりの数を占めるのです。当然、YHの雰囲気は静かになりがちです。
 ところが、そんなホステラーさんたちも、YHに何泊かしているうちに、旅慣れてきます。そして北海道の外れに行けば行くほどホステラーさんたちは、旅慣れてくるものです。
 実際、岬の外れとか、離島などのYHに来ているホステラーさんたちは、実に気軽に声をかけあうし、初対面の人とでも直に意気投合して旅を盛り上げてしまいます。つまり、旅の楽しみ方を知っているホステラーさんが、多いわけです。
「北海道に行って人生が変った」
という人たちの殆どが、実は北海道の外れのYHにハマッた人たちである事を思えば容易に納得できる事と思います。では、まきばYHの場合はどうなんでしょう? まきばYHに泊りに来るホステラーさんたちの御客さん気質はどうなんでしょう?

 釧路と言う所は道東の玄関口です。道東を旅する社会人の旅人は、釧路空港に降りる人が多く、バイクや愛車で道東入りをする旅人も、釧路港に入る人が多いです。また、電車で旅する旅人も東京から(または大阪から)夜行移動で一気に釧路入りする人が多く、したがって、釧路に訪れた旅人の多くは、北海道に来て初めてYHを経験する人が多いものです。
 釧路には、釧路YHと釧路まきばYHがありますが、旅慣れている人は殆ど釧路YHに宿泊するようでした。釧路YHは、まきばYHより千円も宿泊費が安い上に、YHまで歩く距離が実に短く(たったの30秒)、食器洗いもさせられず、消灯時間が遅く、規則が緩やかで、予約の手続が簡単です。
 その反対に、まきばYHは、初めて北海道に来た旅人や、生れて初めてYHを使う人たちが、ホステラーさんの殆どを占めていました。要するに、旅慣れてない人たちが多かったわけです。ホステラーさんたちの多くは、食事を外食ですまし、部屋に閉じこもったきりでした。食事をとったホステラーさんにしたって、見知らぬ客同志の会話も、旅人同志の情報交換も無く、食堂はいたって静かでした。
 世の中には、そういったYHが好きだという人も多いと思いますが、私には我慢がなりませんでした。御客さんに、もっと、旅の素晴らしさを発見してもらいたいと思いました。生れて初めてYHに泊る御客さんを、もっとYHにハメてあげたいと思いました。そこで、私は考えました。ミーティングを行なおうと・・・・。

 それでは過去に、まきばYHでは、どんなミーティングを行なってきたか? 調べて見ると、スライドや写真や地図を使って観光案内をする事が殆どだったようです。
 実は、この観光案内。是か非か難しいものがあります。観光案内は聞きたい人と聞きたくない人がいるからです。まきばYHの消灯時間は22時と、とても短いものです。食事して風呂に入り洗濯をしたら、アッと言う間に消灯です。本当の事を言えば、ミーティングは無くしてしまい、少しでも御客さん同志が話のできる時間がほしい・・・・。私は、そう考えてました。実際、ヘルパーをし始めた頃は、まきばYHではミーティングをやりませんでした。あくまでも御客さんの自主性を重んじたわけです。
 しかし、そうも言っていられなくなりました。まきばYHでは、旅慣れていない御客さんたちが多いため、ほっとけば、部屋から一歩も出ない御客さんや、誰とも口をきかない御客さんばかりでした。

 ミーティングをやらなければ!
 ミーティングをやって、
 もっと御客さんたちを盛り上げなければ!
 そしてまきばYHをもっと楽しいYHにしなければ!
 そう思い、ミーティングを始めたのです。

 観光案内は、よほど巧くやらないと、旅で疲れているホステラーさんたちは眠くなってしまいます。考えたあげく、私はミーティングをパートTとパートUに分けました。

 パートTでは、『世にも恐ろしい話』をミーティング参加者全員に話しました。『世にも恐ろしい話』とは、私が過去一年間に世界中を旅した数々の冒険談です。さいわい、この『世にも恐ろしい話』は、とても好評でした。波はありましたが、爆笑、また爆笑の連続で、恐ろしいほど受けました。旅慣れてないまきばYHのホステラーさんたちにとって、『世にも恐ろしい話』は夢物語に聞えたようでした。

 パートUでは、席がえをしました。観光案内を聞きたい人と、聞きたくない人と席を分けたのです。男の子ばかりで集まっている席、女の子ばかりで集まっている席は、遠慮なく、男女半々に強制席がえを行ないました。

 観光案内を聞きたくない人たちには、お互い自己紹介をしてもらいました。知らない人同志、旅を語りあってもらいました。まきばYHのホステラーさんたちが旅慣れた人たちばかりなら、ほっとけばいいのですが、旅慣れていないまきばYHのホステラーさんたちには、遠慮無く出しゃばりました。シャイなホステラーさんたちに、どんどん話すきっかけを作っていきました。
 観光案内を聞きたい人たちには、釧路湿原の観光案内をしました。ただの観光案内では面白くないので、釧路湿原を魅力的に語ることを心掛けました。
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