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『星の牧場』に風がきた

罪のなき悪戯

 七月末、私はペアレントさんから、数日間の御休みをいただきました。『風のたより』隊のトムラウシ縦走に参加するためです。忙しいさなかを抜けるのですから、凄いひんしゅくをかっても仕方ないところですが、ヘルパー仲間や、ペアレントさんや、悦子さんは、喜んで送ってくれました。おもちの差し入れをいただいたり、トムラウシの情報を詳しく教えてくれたのです。
 その結果は、『風のたより』9号に書いたとうり、トムラウシ縦走は素晴らしい登山となりました。好天に恵まれ、十勝岳も美瑛岳もトムラウシも素晴らしい世界でした。
そして、私の顔は、真黒に日焼けしオスマンサンコンのようになってしまいました。ちなみに、その頃の北海道は、どこもかしこも雨ばかり。どうやら晴れていたのは私たちのいたトムラウシ付近だけだったようで、かならず晴れる『風のたより』隊の強運にあらためて驚かされたものです。
 私は、とても満たされた気分で下山し、釧路まきばYHに向ったわけですが、帰ってみると仰天するような事件が、私を待ちかまえていました。釧路まきばYHに着いた私は、着いた早々、悦子さんに、麻衣子ちゃんに
「嘘つき!」
と言われてしまったのです。

「風さんは、トムラウシに行かなかったんだね」
「え?」
「摩周湖YHからきた御客さんが、それも可愛い女の子が、風さんに、すごい御世話になったって言ってたよ! 風さん、トムラウシなんかに行かないで、摩周湖YHで次々と女の子を車に乗せて、遊び歩いていたんでしょ!」
「え〜っ!」
「トムラウシに行ってくるなんて嘘をついちゃってさ、摩周湖YHから来た御客さんが何もかもばらしたんだからね、風さんが女の子を車に乗せて遊び歩いていた事を!」
「ちょ、ちょっと待ってよ! 俺は本当にトムラウシに行ってきたんだよ! 冗談じゃないよ!摩周湖YHだか何だか知らないけど、俺は嘘なんかついてないからね!」

 どうやら、私がトムラウシを縦走している間、摩周湖YHから来た御客さんが、
「釧路まきばYHでヘルパーをやってる風さん」
と言う人間に、車に乗せてもらい、一緒に遊びまくったと証言し、
「風さんに、あの時は御世話になりました。よろしく伝えて下さい」
と言う言葉を残して、どこかに去っていったらしいのです。

 実は、私は車の運転ができません。完璧なペーパードライバーなのです。女の子を乗せて遊びまわるなんて、とても出来ない事です。第一、当時の摩周湖近辺(道東)は何日も雨が続いていたわけですが、私はトムラウシで日焼けをし、オスマンサンコンのように真っ黒になっていますし、髭もボウボウにはえています。
 体も登山靴も臭くにおってましたし、テントもシェラフも泥だらけでした。それを理由に、一生懸命、摩周湖YHに行ってないことを、トムラウシに行ってたことを説明したわけですが、麻衣子ちゃんは
「ええ〜っ?」
と、疑惑の目を変えません。悦子さんも、私に不信感をもっていたようです。しかし、ペアレントさんは、昔、登山をやっていました。
「私は風さんを信じるよ!」
と、助け舟を出してくれたのです。

 縦走。それは登山の中で、もっとも肉体を酷使する厳しいタイプの山登りです。トムラウシ縦走の場合、三日間の間、風呂に入らず、たいした着替えも持たず、草や泥や雪をかきわけ、崖や岩をよじのぼり、重い荷物(二十キロ以上)をかつぎ、紫外線の強い太陽光をあびます。縦走経験のある者なら、一目瞭然で、私がトムラウシに行って来たかどうかわかるわけです。ペアレントさんは山男でしたから、一目瞭然で私がトムラウシ縦走したことを信じたわけです。
 それにしても、摩周湖YHから来た御客さんは、いったい何だったのでしょう? 何の目的でそんな嘘をついたのでしょう? まあ、罪が無いと言えば罪のない悪戯ですが、なんだか気味の悪い事件です。まさか『風のたより』の読者が、そんなことをするとは思えませんが、もし、心当りのある方は自首して下さい。
 実は、このような「罪のない悪戯」は、私がヘルパーをやってる間に、数えられない位にありました。私の名を語る人が北海道のあちこちに出現したのです。それらの御話しについては、紙面が足りないので、また今度に致します。
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