語録&解説
第5話 面川清次のホテルに対する考え方
「これからどうしますか?」 「うん?」 「何もせずに、このまま待っていたら、半月で予算を食いつぶしてしまいますよ」 「こころあたりは、たいていまわってきたんだからね」 「しかし来ないじゃないですか」 「季節はずれなんだ、すぐ反応はでないさ」 「黙って待ってられますか?」 「どうしたらいい」 「春の慰安旅行みたいなものが会社によってないでしょうか?」 「10人だけのかい?」 「他の部屋も使うんです。掃除してあるんですから使って使えなくはありません」 「そういうホテルにはしたくないんだ」 「一時のことです。金ができ次第、できるだけ早く改装するんです。きれいなこと言ってたら半月もたないかもしれませんよ。団体をとりたくないのは分かりますが、この時期に団体以外の何がとれるんですか? 一人二人ならくるでしょうが、少なくとも週末には満室にならないとやっていけないんです。20人しかとれなくて団体というのは非常に難しいでしょうが、挨拶だけでなく積極的に予約をとりにいく必要があるのではないですか」 「考えているよ」 「1日遅れれば、それだけ金が減っていくんです」 「しかし2日目には客が来た」 「金にはなりませんでした」
「あの8人をみただろう? 8人でさえわがものかおだ。10人、15人のグループを入れれば、他のお客さまの評判は悪くなるだろう。団体を入れれば入れるほど、他のお客さまの評判は確実に悪くなるだろう」 「客が一人もいない時に何を言うんですか」 「そうだな。夢を描きすぎるんだな」
解説
面川は、決して団体をとろうとはしませんでした。どんなにお客さまが来なくても、あくまでも個人のお客さましかとりませんでした。そのためにホテルの経営はどんどん悪化していきました。しかし、この信念がホテルを成功させていく鍵となるのです。これは宿泊施設における基本原則みたいなもので、ターゲットを絞ることによって、お客さまの期待と信頼を裏切らないサービスを提供できるからです。
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