語録&解説
第12話 社長に借金をたのみに行って
「どうしても必要なんです。あと100万を融資していただきたいのです。御願い致します」 「なぜ100万なんだね」 「ぎりぎり必要なお金なんです。(帳簿を)ごらん頂ければ、おわかり頂けると思います」 「なぜ、さっき君は、それを言わなかったんだね」 「・・・・」 「さっき君が来たときに何かあるなと思った。だから『何か用か』と聞いたはずだ」 「・・・・」 「本当に必要な金なら、なぜ最初に言わなかったんだね」 「・・・・」 「借金というものは、そんな弱気でできるものではないよ」 「・・・・」 「私は前に一度、もう100万出しても良いと大貫君に伝えたことがある。君はそれを大貫君から聞いたはずだ」 「・・・・」 「しかし君は私の申し出を断った」 「・・・・」 「あの時なら私は、何も言わずに君に100万を出しただろう」 「・・・・」
「しかし今の君にはびた一文出す気はない。なぜだか君は分かるかね」 「わかりません」 「今になって、もう100万をだせというのは、君の甘さを白状しにきたようなものだからだ」 「・・・・」 「違うかね」 「・・・・」 「どうしても100万必要なら他をあたりたまえ」 「・・・・」 「それができないようなら、もうホテルはやめたまえ」
解説
ボイラーを買い換えたために予算は底をついてしまいました。そこで、面川清次(田宮二郎)はホテルのオーナーである舅(鉄鋼会社の社長・岡田英二)に融資をたのみに行くのですが、見栄が災いして借金を断られてしまいました。私も銀行や金融公庫などに借金を申し込みに日参したことがありますが、面川の舅の言葉どうり、借金というものは、そんな弱気でできるものではありませんでした。この社長の言葉は一見冷たいように聞こえますが、これが社長の愛情であることは、今の私には分かります。本当に必要な金なら、面川はもっと正々堂々と主張してよかったはずなのに、舅への見栄が足枷になってしまっている。それを見破った舅は、どうせ見栄をはるならトコトンはりなさいと激励したわけです。しかし、面川は、そこまでの意気地はなかったために、身を崩してしまい、最悪の醜態をスタッフに見せるのです。
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