旧作 旧作・高原へいらっしゃい 
(昭和50年度・山田太一作品) 

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念願のホテルマン 田宮

TBS高原へいらっしゃい 半年ぶりのテレビでハッスル

 寒風の八ヶ岳ロケ 田宮二郎が半年ぶりのテレビドラマに取組んでいる。TBS「高原へいらっしゃい」のホテルマン役。湖のほとりのオンボロホテルを十人の男女が力を合わせて再建して行く過程を描いた山田太一の書き下ろし作品。

「ホテルものは以前から1度やりたかった。難しい役どころだが、その分、やりがいがありますね」

と全力投球。このほど行われた八ヶ岳ロケでも、寒風の中、夏服一枚で迫真の演技を続けていた。


“本番!”夏服1枚で迫真の演技
「零下1度、涙が」

原作者・山田太一と納得ずくで・・・

 ドラマのでき具合は、まず脚本のよしあしで決定する。その天、今回の場合、企画段階から綿密な打ち合わせを繰返し、山田太一と田宮がお互い納得の行くまで話し合った上で筆をとった。すでに第2話まで放送されているが、高原ホテルの再建をタテ系に、そしてそこに集まった見知らぬ同士の人間模様をヨコ糸にからめたこの脚本、局内やマスコミにも「さすが!」との評判だ。田宮も強調して

「例えば、セリフ一つとっても、山田さんは実際に話しながら書いて行くんですね。だから、演技する側も自然にしゃべれる。着想も素晴らしいし、展開も興味深い。女房なんか、帰ると“次の台本まだなの?”って聞くんです。美容院なんかで読むらしいんですね」

 テレビドラマについてはTBSと専属契約を結んでいる田宮、これまで「白い滑走路」「樹氷」「白い地平線」などに出演。クールで都会的センスあふれる男を演じて来たが、今度のは趣がちょっと違う。ある事件が元でクビになった元エリート。・ホテルマンがオンボロホテルの再建を、再起のチャンスとして与えられる。脱都会派の男女を集め、公平な利益分配を条件に、再建のスタートを切るが、この田宮支配人、リーダーとしては何とも頼りないのだ。

 オーナーにすべてをまかせられている、と吹聴しながら、どうもそうではないらしい。また、初の新婚客が来るといっては「一流ホテル並みの接待で迎えよう」と意気込み、前田吟の経理課長に「くつろぎに来るお客が、かえって緊張してしまうじゃないですか」とたしなめられたりする。さらに、週刊誌の記者が来るとなると、従業員を客に化けさせ、繁盛をよそおったりもする。

 つまり、弁は立つがどことなく軽薄でうさん臭く、100l信用できないといった感じの男なのだ。

 田宮が、このドラマに執念を燃やすのは、1つには前回の「白い地平線」の視聴率的失敗があげられる。この時はボクサー役だったが、主役の田宮のみ目立ち過ぎたきらいがないではなかった。これに対して今度のはそれぞれの個性が入り乱れた集団ドラマ。一糸乱れぬチームワークが要求される。


前田、由美らの心強い兄貴

 その点、スタッフのリーダーとしての田宮はなかなかのもの。収録の合い間には、若い役者から習ったクイズをディレクターにやらせて、みんなして笑い転げ、夜は率先して麻雀の卓を囲む。収録開始から1ヶ月、共演の前田吟、由美かおる、尾藤イサオ、潮哲也やに心強い兄貴として慕われている。

 今回の八ヶ岳ロケは、西部の八ヶ岳高原ホテルを借りての実景中心の収録。標高1580b東京では桜が満開の季節とはいえ、高原の風は冷たい。朝の気温が零下1度。

「寒くって涙が出ちゃう」

とハンカチを目に当て、ガタガタ震えながらのリハーサル。冬場ならそれなりの格好をして、カイロも用意されているから意外に寒さを感じないものだが、今回はことのほか厳しい。しかし「本番!」の声がかかると、ビシッと表情を決めるあたり、さすがである。

 第1話の視聴率が
 ニールセン調べで13l(ビデオ・リサーチは11・6l)と、まずまずの数字。
 これがどこまで伸びるか?
 田宮のタレントとしての真価が問われるところである。