ブルーベリー 旅に出たい人へ
  風のひとりごと

写真に思うこと

 旅人にとって写真のプレゼントくらい嬉しいものはありません。なぜなら写真の中には、思い出が入っているからです。

 プレゼントというものは、何であれ嬉しいものですが、一番貰って嬉しいプレゼントは、思い出ではないでしょうか? 写真にしろビデオにしろ何だっていいのです。絵葉書でもいい。押し花だっていい。それが心に残る思い出となるのならば、それこそ、本当に素晴らしいプレゼントだと言えます。

 そう言った意味で、写真ほど可能性を秘めたプレゼントはないでしょう。前にも言いましたが、写真には思い出が入っています。思い出には、楽しい思い出、悲しい思い出、辛い思い出、何でもない思い出と、いろいろあります。
 だから、もしプレゼントする写真に、夢見るような素晴らしい思い出が込められていたら、その写真は、とても素晴らしいプレゼントになるはずです。その逆に、何でもない思い出の入った写真をプレゼントしても、そのプレゼントは、あまり喜ばれません。

 写真というものは、一枚、たったの30円です。けれど、このたったの30円の贈り物が、人の心を揺さぶる事があります。その逆に何万円使っても人の心を動かす事ができない場合もあります。100枚の写真のプレゼントより、たった一枚の写真のプレゼントが、人の
心をうつ事があります。写真とはそういうものです。思い出をプレゼントするという事は、そういう事です。

 実は『風のたより』や北軽井沢ブルーベリーYGHでは、思い出をとても大切にしています。私たちは、やたらと写真やビデオを撮りますが、それは、参加してくれた皆さんに思い出をプレゼントするためです。できごとの記録を文章に残すのも、思い出を皆さんにプレゼントするためです。
 そういう意味で全国の皆さんに、月刊『風のたより』を贈っているのも、思い出を全国の皆さんにプレゼントするためです。『風のたより』こそは、思い出のかたまりなのです。

「思い出をプレゼントしませんか?」

 これは別に写真に限った事ではありません。ビデオでも、手紙でも、何にしても、思い出としてプレゼントする事を考えてはどうでしょう? それもお金がかからないプレゼントがいいでしょう。思い出に、お金をかけるのは、馬鹿馬鹿しいとは言いませんが、あまり感心しません。お金で買える思い出なんて、ありがたみがなさすぎます。思い出は、お金で買えなければ、買えないほど、ありがたみが増すというものです。
 思い出には、お金をかけるより、手間をかけたほうがいいと思います。手紙は、とても手間のかかるプレゼントですが、「俺は、三行以上字を書くことができない」という人もいます。そんな人には写真がいいかもしれません。写真なら誰だって撮影できます。写真ならお金もかかりません。

 でも、世の中には写真やビデオに対して懐疑的な考えを持っている人がいます。「写真を撮るよりも、景色を目に焼きつけてしまう方が素晴らしいと思う」という人や、「写真ばっかり撮ってて、ろくに景色を見ていない人に感心しない」という人がいます。
 なるほど・・・・と思います。
 けれど、そう言う人の考え方は、思い出を自分だけのものにする発想です。それが悪いとは言いませんが、思い出を自分だけのものにするのは、あまりに淋しすぎます。
 思い出は、多くの人に共有されてこそ、より懐かしい思い出となってくるからです。思い出を共に語り合える相手がいる事は、とても素敵な事です。だからこそ、私は思い出をプレゼントすることを勧めます。写真に、手紙に思い出を込めてプレゼントすることを勧めます。

 それでは、写真に思い出を込めるには、どうすればいいのでしょうか?どうしたら、素晴らしい思い出を写真に込めてプレゼントできるのでしょうか?
 旅をしている時、山に登っている時、旅の宿で会話に花が咲いている時、一瞬、ほんの一瞬、幸せを感じる時があります。夢を見ているような気分になる事があります。かってない楽しい一時を過ごしていることに気づく事があります。そんな時が、写真を撮るチャンスです。後から思いだした時、あの時が一番楽しかったと思える一瞬が、一番の思い出になるわけです。

 ああ、美しいなあ・・・・という景色。何日も待ち構えて、やっと撮った野性生物の写真も、素晴らしい思い出の込められた写真です。そんな写真は、写真だけではなく、写真に込められた「思い出」を手紙に書いて一緒にプレゼントする事をお勧めします。写真に込められた思いを手紙に書くことをお勧めします。
 でも、何といっても素晴らしい思い出をプレゼントするには、素晴らしい思い出をもっていなければなりません。プレゼントしたくても、思い出自体がなければ、プレゼントしようがありません。だからこそ、旅先で素晴らしい思い出を作りたい!

 素晴らしい思い出は、偶然や運命が作るのではなく(そういう場合もあるかもしれませんが)、本当は、自分自身が作りだすものです。素晴らしい思い出は、素晴らしい旅の中から生まれます。そして、素晴らしい旅をするためには、自分自身が、素晴らしい旅人にならなければなりません。
 つまり、旅先で素晴らしい自分を発揮する事が大切であるわけです。だから、素晴らしい思い出をプレゼントする、素晴らしい旅人になりたい! そう考えている私です。
【風のひとりごと】
(旧「風のたより」9号掲載文・1993)

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