北軽井沢ブルーベリーYGHの世界 登山記録

丹沢山に行く!

 今回の丹沢山登山は、参加申込みの電話が30件もありました。

「もしもし、丹沢山に参加したいのですが」
「丹沢ですけどいいですか?」
「はい、行きます!」
「参加者は全員、男ですけどいいですか?」
「・・・・」
「あっ、無理なさらないでください、朝早いし、いつもより、金がかかりますからね」
「えっ? お金がかかるんですか?」
「そうです! 無茶苦茶かかりますよ! それに朝早いし」
「朝早いって、何時くらいに集合するんですか? 6時。いや、場合によって5時半になるかも」
「えーっ!」

というわけで今回の参加者は9名。20名のキャンセルがでてしまいましたが、これでよしとせねばなりません。なにより本当に山が好きな者ばかりが集まっているのが良いです。
 参加者にNさんという女の子がいました。このNさんは、必ず約束を守る人です。世の中には女の子ルールというものがあります。女の子だから許されるというルールです。これは、男性社会の中で暗黙の了解事項となってることですが、賢い女性諸君は、その女の子ルールを逆手に取って、だらしない男性諸君を手玉にしたりしますが、Nさんは、そういうことをしない人です。だから私などは、Nさんを女にしておくのは、もったいないと思っています。 とは言うものの、そんなNさんも、登山に関しては初心者です。だから、「丹沢山にきたい」といってきたときは、正直いってドキリとしました。そこで多少、脅したりしたのですが、それにもめげずに「行きます」といったのは感動してしまいました。何故ならば、今回の丹沢山では、20人近い参加希望者が、私の脅しに屈服して参加を取り止めてしまっているからです。
「よし! 何が何でも、Nさんを頂上に連れて行くぞ! 場合によっては、おぶってでも連れて行くぞ!」
と思った私です。
 実際、搭ノガ岳の頂上近くの急登のところでは、Nさんの背中を上原先生が押し、私とKさんが、Nさんの左右の手をつないで階段を登っていったくらいです。でも、後でよく考えてみると、歩行タイムは普通より1割ほど早かったのですから、生まれて初めての本格的な登山を行なうNさんにとっては、ものすごいスピードだったはずです。よくがんばりました。

 頂上では、餃子煮込みラーメンを作りました。餃子煮込みラーメンの作り方は、和田アキ子がCMに出ている煮込みラーメンに、餃子とミックスベジタブルを入れるだけで完成します。とてもおいしいですよ。
 鍋割山では、シューマイ・キムチラーメンを食べましたが、シューマイを入れて煮込んだ味噌ラーメンに、冷たいキムチを浮かべるというもので、これも、なかなかいけます。みなさんも試してみてはいかがですか?
 ここのところ私たちの間では、ラーメンがブームになっていますが、ラーメンの偉大なところは、安い事と応用がきくことです。白菜ラーメン・ハムソーセージラーメン・たこ焼ラーメン・餅ラーメン・ミックスピザラーメン・鳥のカラ揚げラーメン。何でもかんでも、すごい応用がきくことです。今回は、餃子煮込みラーメンでしたが、次回はいったい何が出てくるやら・・・・。

 食った後は飲む!

 これが正しい登山の在り方です。たから私たちは、飲んで飲んで飲みまくりました。名酒『吉野川』、安酒『豪傑』、メロン酒、イチゴ酒、ビール、ワイン。
 ああ、気持ちいい・・・・。
 いいかげんに体力を使い果たしてる私たちは、酔いのまわるのも早かったようです。だんだんとフラフラになっていく自分がわかります。

 飲んだ後は寝る!

 これが正しい登山の在り方です。たから私は、御昼寝をすべく芝生に寝転びました。ところが、土井君や上原先生たちは、これから丹沢山に行くというではありませんか。皆が昼寝をしている間に丹沢山まで走ってくるというのです! サムライマラソンの練習をかねて走るというのです。そういうことなら、「私も走るぞ!」と出かけました。

 飲んだ後は山を走る!

 これが間違った登山の在り方です。たから皆さんは絶対に真似をしないでください。横っ腹が痛くなるほど飯を食い、フラフラになるまで酒を飲んだ後に、山を走るなんて、自殺行為もいいところでした。
 横っ腹は痛くなるし、ゲロは吐くし、息は苦しくなるし、生命の危険を感じながらようやく丹沢山についてみると、そこには上原先生と土井君が、涼しい顔をして立っていました。うーん、すごい!
 しかし、なんだ。俺も年をとってしまったなあ・・・・と、服を全部脱いで、バタンキューと倒れた私。すると、土井君と上原先生も、
すっぽんぽんになってバタンキュー。

 そこにやってきたのが、H君、S君、N氏、Kさん(女性)たちです。私たち3人は、すっぽんぽんで寝ていたので、Kさんは、仰天びっくり。目が点! それもそうでしょう。●●君なんか、パンツ1枚で大の字になって寝ていたのですから。まともな女の子だったら、キャーと叫ぶところです。
 ところが、
 ところがです。
 H君、S君、N氏も、服を脱ぎはじめるではありませんか。そして、全員すっぽんぽんになってゴロリ。あげくのはてにはKさんを囲んで記念撮影も。なんと、すっぽんぽんの男どもが、Kさんをグルリと取り囲み、写真をとったのです。しかも、半穴(はんけつ=半分お尻をだすこと)状態で!
 ああ、無情。
 やはり、酒を飲んで山道を走ってはいかんなあ〜。こんなこと読者に知られたら、どう思われるかなあ〜。やばいよなあ〜。ないしょにしとかなければダメだなあ〜。いくら読者にウケたくても、会報なんかには、絶対に書いてはならんよなあ〜。やっぱ、ないしょにとしこう。秘密にしておこうっと! Kさん、ごめんね。
 この件は秘密だからね。だれにも言ってはいかんからね。

それにしても三十歳(みそじ)をこえたオヤジたちの醜い姿よ。こいつらは、三十歳(みそじ)の会というものを作っているらしいのです。ちなみに三十歳(みそじ)の会の参加資格は、男は年齢が三十歳以上であること。しかし女の子に限っては、若ければ若いほどよい。というらしいのです。

「なんだ、そりゃー」
「ただのオヤジとかわらんではないか!」
「やめてくれー」
「セクハラだー」

 非難ごうごう雨あられ。こんな傲慢でオヤジ臭い会を認定できるわけがない! もっとも、三十歳の会の幹部たちは、認定してもらう気は、さらさらないらしく、
「どうせ、俺たちゃオヤジよ」
と開き直っているから始末におえません。
 あ〜、いやだ、いやだ。これだから、オヤジは嫌なんだよと、眉をひそめていますと、
「佐藤、こんど幹部会議をやるからな」
と通達がきました。

 え? なんだって?
 いつから俺は幹部になったんだ?
 冗談じゃないぞ。俺は、そんなもんの幹部なんかごめんだぞ!

 そういったわけで、ハイキング参加メンバーの最大の話題は、三十歳(みそじ)の会の話題です。その中でも、やってくれたのが、Tさんです。

「三十歳の会ってダサイわよね。名前を変えたらどうかな?」
「例えば?」
「おしゃれサーティー」
「・・・・」

 おいおい、「三十歳の会」より、「おしゃれサーティー」の方がダサイぞ。三十歳男が、そろいもそろって、僕たち「おしゃれサーティー」なんだなんていってたら、天罰が下ること間違いないぞ! こんなアホな会は、さっさと解散消滅させてやる!
 しかし、おしゃれサーティーは、いや、三十歳の会の勢力は、無情にも、巨大化していくのだった。なにしろ、時間がたてば、時間がたつほど、おしゃれサーティー、いや、三十歳の会の会員は、増殖し続けるのである。つまり、歳月とともに、三十男が次々と誕生してくるからである。

 ま、まずい! な、なんとかしなくては。
 メンバーの高らかな笑いが聞えてくるではないか!
 あやうし。
 私たちには、未来はないのか?
 明日はないのか?
 このまま、おしゃれサーティーに滅ぼされてしまうのか?
 ああ、おしゃれサーティーたちの歌声が聞えてくる。
 あの悪魔の歌声が!

♪ウッハッハ、ウッハッハ、ウッハッハノハ
  ウッハッハ、ウッハッハ、ウッハッハノハ
  俺たちゃ変態! ウンウン!
  だじゃれ言うぞ! ウンウン!
  おしゃれサーティー
  好っきなもの、好っきなもの、酒と飯(めし)!
  若い生き血を吸い続け、
  それ行け、それ行け、
  三十歳(みそじ)会、三十歳(みそじ)会〜♪
(タイムボカンのエンディングテーマ曲で歌ってください)

 そうだ! おしゃれサーティーの弱点をつけばいいんだ。しかし、おしゃれサーティーの弱点は何んだろう?
 あっ!
 わかったぞ、あいつらの弱点は、年齢が高いことだ。つまり若い奴らより、体力がないわけだ。よし、それならイベントからハイキングを無くそう。登山ばかりにしてしまおう。そうすれば参加者は、若い奴らばかりになって、体力の衰えた30男は、
「私しゃもうごめんだよ」
と降参するかもしれないぞ。ヒッヒッヒ、そうだ、この手で行こう!

 結果。
 三十歳(みそじ)の男は強かった・・・・。
 登山に参加しようという、若者などは、なかなかあらわれず、おしゃれサーティー、いや三十歳の会の摩の手は、ますます勢力をふるうのだった。
 あやうし、登山隊!
 負けるな、登山隊!
 世界の平和を守るため、今日も闘う登山隊!
【風のひとりごと】
(旧「風のたより」17号掲載文・1994)

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